ファクタリングは違法?合法?

ファクタリングは本来、経済産業省が推奨する極めてまっとうな『資金調達方法』ですが、一部の悪徳業者や利用者が存在することで違法な取引というイメージがあるのも事実です。また、『ファクタリングという存在自体は合法ですが、貸付という判断をされるようなやり方をしている場合』は違法になる可能性もゼロではなく、どのような行為が違法行為にあたるのか理解しておく必要があります。

【ファクタリングの概要】

事業者がファクタリング会社に対し、決算前の売掛金(売掛債権)を売ることで、その対価としてファクタリング会社から手数料などを引いた金額が入金されるシステムです。通常、売掛金が入金されるまで数か月かかりますが、ファクタリングを利用すれば手数料分は引かれるものの、すぐに現金が入手でき、『銀行の融資が受けられずに売上が入ってくるまで会社のやりくりが難しい』『従業員の給料が払えない』というような早めに現金が必要な時などに対処できます。また、他の資金調達方法と比較すると審査が緩かったり、手続きが少ないのも利用しやすく魅力的であると言えるでしょう。

【ファクタリングはなぜ違法と間違われやすい?】

▶現在ファクタリングの根拠となる法律は『民法第466条』のみ

基本的にファクタリングの根拠は民法第466条の『債権は譲り渡すことが出来る』というものだけとなります。そのため、規制が緩くどんな業者でも参入でき、利用者を守ってくれる法律も少ないため、違法業者には細心の注意を払わなくてはなりません。

▶ファクタリングの利息は利息制限法や賃金業法の違反になる?

銀行などの融資と比較し、ファクタリングの手数料は割高です。利息制限法によれば借り入れ額にもよりますが、平均15~20%/年の利息が上限となります。しかし、ファクタリングの場合は1か月で10~20%、年率に換算すると120~240%となり明らかに利息制限法を超過する内容となっています。ファクタリングはあくまで『借り入れではなく、売掛債権の売却』です。そのため、貸金の利息上限について定めているこの法律の制限を受けないというのが現状です。また、もう1つの根拠として『ファクタリングは債権の回収ができない場合でもファクタリング会社に対して利用者側が借入額の返金の必要がない』という決まりがあるということです。ファクタリング会社が『売掛債権』のデフォルトリスクを全て背負っていると認められた時のみ、ファクタリングは『貸金ではなく売却』とみなされます。この条件で契約していない場合は、これらの法律に違反していると指摘される可能性があるため、契約の際にしっかりと確認しましょう。

【民法で認められているファクタリング:2社間】

2社間のファクタリングが認められているのは『民法第555条の売買契約』です。

民法第555条では以下のように定めています。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

債権の売買にあたり、債務者(借り入れ主の取引先の企業)の同意を得ずにファクタリングを2社間で行うことができるのはこの民法に順っているため合法となります。

【民法で認められているファクタリング:3社間】

3社間のファクタリングについては2社間の『売買契約』に加えて民法第467条が根拠となっています。

債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

3社間ファクタリングの場合は譲渡人である納入企業が取引先で支払い人となる企業に通知し、この支払い人となる企業が同意をしなければ3社のファクタリングは成立しません。

【債権の保全を図った場合は『貸付』とされるので注意】

以下の内容が契約に組み込まれている場合はファクタリングの『売掛債権の売買』ではなく、『貸付』と判断され、利息制限法などが適応され違法になる可能性があるので注意が必要です。

▶償還請求権がある

先ほども述べたようにファクタリングでは売掛金が未回収の場合でも、事業者(借りた側)は返金義務が生じません。ファクタリングの定義は『この売掛債権のデフォルトリスクまでも買い取る』ものであり、償還請求権がないのが普通です。ファクタリングという名目で高い手数料を設定しているにも関わらず、償還請求権ありの場合は『債権の保全を図っている』とみなされるため、実質的な貸付と判断されます。

▶手数料がリスクに見合わない場合

リスクが高い売掛債権の場合は手数料が高くなるのは当たり前ですが、例えば売掛先が官公庁のような明らかに倒産するリスクがないような場合にも関わらず手数料が高すぎる場合『債権の保全を図っている』とみなされ、実質的な貸付と判断される可能性があります。

▶一括で買い取らない・一部しか買い取らない

ファクタリングで売却した債権を一括で買い取らなかったり、全て売りたいにも関わらず一部しか買い取らないといった契約の場合も『債権の保全を図っている』と判断される可能性があります。例えば100万円の売掛債権を売却したにも関わらず、まずは50万円支払い、残りの50万円は期日に現金を回収できたのちに渡すというものや、100万円のうち50万円だけ買い取るというような内容です。売掛債権は分割することはできません。ですので、このようなケースも貸付と判断される可能性が高いでしょう。

▶担保や保証人を要求する

本来、ファクタリングではこれらは必要ありません。担保や保証人を要求するということは万が一の場合、担保や保証人から回収しようとしているとみなされ、こちらも『債権の保全を図っている』と判断されます。

【まとめ】

ファクタリングの契約内容で手数料が変わるため、手数料が高すぎるから違法というわけではありません。逆に言えば、手数料がいくら高くてもファクタリングが契約通り行われ、売掛金が一括で支払われるのであれば合法です。しかし、先ほどもいくつか例をあげたように『債権の保全を図っている』ような契約内容の場合は『債権の売買』ではなく『貸付』と判断され、違法とみなされる場合もあります。ファクタリングを利用する際はいくつかの会社を比較した上で、利用する会社を決め、契約内容についてもしっかりと理解した上で利用するようにすることが大切です。